2015年8月4日火曜日

食生活・油⑥

みなさん、こんばんは。ご機嫌よろしゅうございます。
もう8月になりましたね。猛暑がつづきますが、いかがお過ごしでしょうか?
神奈川では本日、花火大会でございます。そのためか来院する患者様が少なく、私は合間に裏から花火を見上げながら当ブログを書いています(笑)。


さて、油の話の続き。
前回は脂質について簡単にご説明させていただきました。

油はざっくり分けると植物油と動物性脂に分かれますが、植物油は主に不飽和脂肪酸、動物性脂は主に飽和脂肪酸です。

そして不飽和脂肪酸を水素添加により加工した時に、本来の自然な形であるシス型からトランス型に変化したものがトランス脂肪酸なのです。

ところで、みなさんはコレステロールについてどういうイメージをお持ちでしょうか?
健康診断で数値を気にしたりと、あまり良いイメージを持っていない方も多いのではないでしょうか。

本来、コレステロールそのものは全く悪くありません。むしろ健康を維持するのに欠かせない脂質であり、リン脂質と一緒に細胞膜を構成し細胞内外に様々な物質の出入りを調整しています。
またホルモンの唯一の材料で、一部のコレステロールは肝臓内で胆汁に作り替えられます。小腸内で脂肪を乳化し消化、吸収しやすくしたり、脂溶性ビタミンA、D、E、Kなどの吸収に大切な役割を果たしているのがコレステロールなのです。

コレステロールの供給源は食事から摂るものと体内で合成されるものと2つありますが、そのうち肝臓で生産される量は一般に食事で摂取する量の約3倍に相当します。これは肝臓が小腸から吸収されたコレステロールが血液中に運ばれると、それを察知して生産量を抑制したり少なくなると合成を促進したりする働きを持っているからです。

血液と脂肪はいわば「水と油」の関係なため、そのままではコレステロールは血液に溶け込みません。そのためタンパク質と結合させて血液中に運ぶのですが、これをリポタンパク質といいます。
リポタンパク質はいわば「運び屋」のようなもので、脂質を臓器から臓器へと運んでいきますが、ここでキーワードとなるのが悪玉コレステロール(LDL)と善玉コレステロール(HDL)になります。
どちらもリポタンパク質の中の種類なのですが、どちらもとても必要なものになります。よく「悪玉」コレステロールだけが名前の通り悪者にされ無くせば良いと思っている方がいらっしゃいますが、重要なのはこの2つをバランスよく保つことなのです。
いる、いらないといった極端な二元論ではなく、何でもバランスが大事ということですね(そもそも「悪玉」という名前が悪いですよね)。

LDLは体内に運ばれると細胞の表面に到着し、LDL受容体という専用の入り口から細胞内に入ると細胞内で分解されそのまま細胞膜に組み込まれて使われたり細胞内に蓄えられます。そして使用済みとなったコレステロールは細胞内膜の表面に出ていきます。
一方、HDLは細胞内には入れません。さきほどの使用済みとなったコレステロール(LDL)を回収しながら血液中を移動し、再び肝臓に戻ります。

さきほど体内のLDHとHDLの量のバランスが大事と言いましたが、トランス脂肪酸は肝臓にダメージを与えて体内のコレステロール合成量を調整する機能を壊してしまいます。それによりHDLが減りLDHが過剰生産され、血液中のこの2つの均衡が崩れてしまいます。血液中に過剰となったLDHは血管壁にくっついて溜まりやすくなり、そのまま放置しておくと酸化してしまいます。すると白血球の1つであるマクロファージがこれを掃除し動脈壁内部に引き込んで消していきますが、この時の残骸が蓄積して血管が狭くなり動脈硬化が進行、心臓のトラブルリスクを高めてしまうのです。

アメリカの研究データでは、8万人の女性を調査しトランス脂肪酸を最も多く摂取するグループでは最も少ないグループに対して心筋梗塞を起こす危険性が約30%も高かったと出ています。

たしかに、LDLが動脈硬化の原因になっているというところだけを切り取ってみれば「悪玉」です。しかし、本来LDLは細胞膜を構成するのに必要で、むしろ「善」な存在です。
極端にHDLが減りLDLが増えてしまいそのバランスが崩れたことで、使用済みとなり要らなくなったLDLを回収することができずに血管に悪さをしてしまっている、ただそれだけなのであります。
決してLDLそのものが悪者なわけではなく、LDLにその責任のすべてを押し付け悪者にし、問題の本質から目を逸らさせている。こういうのを責任転嫁というのでございます。

...あれ?これって原発を稼働させてた時の使用済み核燃料みたいな話ですね。もっとも、こっちは高速増殖炉もんじゅだけじゃなく原発も悪者にされていますが。

話を元に戻します。
日本における食の安全に関わる問題の多くに、こういった論点のすり替え、責任転嫁が見られます。そのだいたいに「これが悪い!」「これが原因だ!」という極端な主張や意見が見られますが、話はそう簡単ではありません。
人間の体は複雑系であり、「1か0か」というような単純なものではなく、必ず「1と0の間」に答えが隠されているものなのです。

みなさんも、健康情報や食の安全などに関わる情報に触れた時に「これって本当なのかしら?」と何でも鵜呑みにせず、疑問を持つことをクセづけることをオススメいたします。
あ、もちろん私が間違っている場合もありますので、念のため(笑)

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